The Shape was made in a long Journey それは長い旅路の中で生まれる イサムノグチ

Art Trip Ueno Tokyo

Isamu Noguchi Tokyo Metropolitan Art Museum  Japan
イサム・ノグチ 発見の道  東京都美術館  東京  日本
彫刻家 インテリア プロダクト デザイナー

NYCと高知市牟礼にイサムノグチ庭園美術館がある。私は共に未訪問だが、牟礼の美術館が一般公開される数年前、友人のツテを頼り、彼をサポートされていた和泉さんにアトリエを見せていただいた。日本家屋の暗い土間と彼の作品が点在する光眩しい高台をよく覚えている。世界的に有名な作家であるが、テーブルやライトなど手の届きやすい価格で彼の作品をインテリアとして楽しむことができる。それが美濃和紙にインスパイアを受けて製作されたAKARI。今回、コロナ禍で延期になっていたイサム・ノグチ発見の道展へ行ってきた。

この機会にあらためてその足取りを調べてみると、パリではコンスタンチン・ブランクーシに師事している。写真はレアールの”ブランクーシのアトリエ”に並ぶブランクーシの作品群。

『書の流れ』。初見???と思ったが、彼には書がこう見えたんだと笑ってしまう。しかし作品のバランスは本当に素晴らしい。作品の周りをぐるぐる眺めても飽きることがない。間、凹凸、角度とつまらない面が一つもない。ミニマムなラインに表現される本質がブランクーシの影響を感じる。

茅ヶ崎、ニューヨーク、パリ、岐阜、鎌倉、札幌、高松…..、ゆかりのある土地はいくつも挙がる。ロスアンゼルスに生まれ、本拠地はニューヨーク。グリニッジヴィレッジだったり、ロングアイランドだったり、終焉の地はニューヨーク大学病院。多様な文化の中で生きた彼が生み出す作品。今回、最も印象に残った作品はこの『幼年時代』。静かに鎮座する佇まいで、作品の中では一番地味かもしれない。その表層は細かくハンマーで叩いたのだろうか、まるでタンポポの綿のようで、重いはずの石が軽やかにフワッとそこに居るように思える。石の声を聞き、彫り進めるイサムノグチ。彼の幼少期はダブルということで辛い時であっただろうと想像するが、彼は石の中に幼年時代の何を見出したのだろう。

1904年から1988年という激動の時代の中で生み出した作品達は、エネルギーを内に秘め静かに佇みそのまわりだけ時が止まっているかのよう。私の家の「AKARI」もそのような存在だ。改めてあかりの下で座してみよう。
Atsuko Imai

東京都美術館